2010年02月16日

イタリア・フランス出張便り④

③シチリア その1 グリッロの旅

雪景色一面のピエモンテを後に、やってきたのは南国!(?)シチリアです。
真っ青な空に、左に見えるのは地中海、その海の向こうには、すぐにアフリカ大陸が待ち構えます。

イタリア・フランス出張便り④

イタリアは1つの国として共和国に統合されてからまだ200年弱。それまではそれぞれの街の自治体ごとで独立しており、イタリアを囲む、様々な国からの侵略や統合を繰り返したため、町によって、まったく異なった時代背景を持ちます。言葉、人、文化、その全てがその街の最も反映した時代の影響を大きく受けているため街ごとが大きなバライエティーに富んでいます

シチリアの場合は、古代ギリシャ人による紀元前の影響を最も強く受け継ぐ街。古代ギリシャ時代に造られた遺跡がいたるところに存在しています。そして、約2000年以上前からシチリアは穀物を始めとする農作物の地として発展していました。
ワインもそう、シチリアではギリシャ人が紀元前8世紀からこの地でワインを作り、ヨーロッパ各国へと輸出していたのです。

今回のシチリアの旅は、パレルモ空港より東に向かって伸びるグリッロ生産地域を主にしました。

グリッロは、シチリアの他の多数のブドウ品種もそうであるように、ギリシャ時代からの歴史を持つヨーロッパの中でも最も古くから伝わるブドウ品種の1つです。イタリアでは元々プーリァ地方が発祥といわれ、フィロキセラの後シチリアに持ち込まれ、シチリアの白ブドウの60%を占める時代もありましたが、現在はこのマルサラ地域に6500ヘクタールを残すのみとなっています。一時期はイタリア国内でも広く飲まれていたそうです。グリッロから作り出される白ワインはとても爽やか且つフレッシュで、こんな暑い場所でこんなワインが!と驚かされます。

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こちらはシチリア北西のAlcamoエリアに位置するグリッロの畑です。土はTufoと呼ばれる黒土。火山岩です。非常に水はけが良く、ここからは非常にふくよかでストラクチャーがあり、香りも高く、長期熟成向けのグリッロが出来ます。
今年の冬は非常に雨が多く、浸水している畑も見受けられました。なかなか剪定作業に入れないということでした。

もう1つ、シチリアならではの仕立て方を紹介します。こちらです!ギリシャ時代に伝えられたこの手法、アルベレッロ方式。同じくギリシャ時代からワイン造りを行なうプーリアとシチリアで今でも見られる手法です。

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この手法はコブレ式と非常に似ていますが、アルベレッロの面白いところは二本の木を絡み合わせているところにあります。こうすることで、シチリアの暑い日差しと海からの風にも負けず、葉が実を守る役割をするそうです。

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さて、シチリアで我々を迎えてくれたのは、写真の右に写る醸造家のガスパレ・ヴィンチさんです。マルサラ地域の歴史や、その地域でのワインの歴史、醸造のことなど、本当に丁寧に説明してくれました。畑を見たあと、彼のワイナリーを訪ねます。

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カンティーナ・モチアです。このカンティーナはマルサラにあります。ここを語るには、次にマルサラの話もしなければなりませんがひとまずそれはパート②にて、と。一言だけいっておくと、マルサラとはこの街で作られるイタリアを代表する酒精強化ワインで、スペインのシェリー酒などと似ています。一時は世界中で大ブームとなり、多くのカンティーナが存在しました。
ガスパレさんのカンティーナも、昔はマルサラ作りの工場であった所です。その証拠に、中にはいるとほら!!

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これぞ、マルサラを造る装置、ともいうべきソレーラシステムです。作り方はまた次回。強いアルコールを入れる前の「マドレ」(イタリア語でお母さんという意味です。)と呼ばれる30年熟成のものを飲ませていただきました。

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カンティーナにはこんなものまで。伝統的に使われていた、ロバがブドウを運ぶ馬車です。シチリアらしいカラーですね。

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ここは醸造ルームです。沢山のステンレスタンクがあります。そう、非常に果実実の高いグリッロは、ステンレスタンクでさっぱりと作るのが主流です。畑ごとに出来るだけ細かく分けられて収穫されたブドウは、それぞれ別々に醸造され、別々のタンクに入れられます。それを、そのままで出したり、ブレンドさせたりしてワインを生成します。まさにこの部屋は、最後に調理をされるキッチンのような場所です。

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さらに、普段はあまり公開されませんが、こんな実験室も見せてもらいました。

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さて、試飲タイム!今回試飲した中で全体的に印象的であったのは、爽やかなグリッロと、しっかりとしたシラーです。南の気候にとても良くあうのでしょうか。シラーとネロダボラのブレンドなども、とても美味しいものでした。また、メルローで造られたVendemia Tardiva(遅摘みワイン)も非常に興味深いものでした。

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シチリアは、土壌と気候には大変恵まれた土地。しかし、同じくにとは思えないほど、ピエモンテやトスカーナとは打って変わり、インフラの問題や設備投資の問題、そして暑すぎる気候など、長い間多くの発展を必要としていました。しかし一番胸を打たれるのは、そのギリシャ時代に始まったという長い長いワインの歴史です。
そしてギリシャの神殿跡が横たわる過去と同じ場所で、ガスパレさんのように、より現代的に、ワインが造られ続けているという事実です。イタリアのほかの地域ともまた違う、シチリア独自のワイン造りがそこにありました。   

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セジャスタ遺跡



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Posted by ワインと食材の店 ビアンコロッソ at 19:05│Comments(0)イタリア・スペインの旅
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